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もう一ヶ月もたってしまった。3月11日に、nyで行われた、「―震災 SHINSAI―Theaters For Japan」という企画。震災の被災者を、表現者を支えたいという思いで米国の、各国の表現者がかかわってくれた企画。私も短い台本を書いた。上演していただいた。その報告を、現地に行って参加された劇作家の篠原久美子さんが作成された。ここに、長文ですが、掲載させてもらいます。報告、という控えめな表現ではおさまらない、読んでみるとその場に集った人たちの熱さがたっぷり伝わるとてもすばらしい文章なのだ。

………………………………
―震災 SHINSAI―Theaters For Japan 報告書
「共感」という才能に溢れたイベント
アーティストがアーティストを支援するイベントに参加して
劇作家 篠原久美子

■はじめに
 2011年3月11日の震災で被災した日本の演劇人を支援するために、アメリカの演劇人達が大きな企画を立ち上げた。10分程度の演劇作品をアメリカと日本の劇作家やミュージカル作家たちが提供し、その作品をインターネット上に公開し、2012年3月11日の一日限り著作権をフリーにする。上演希望者はネットから登録申請してダウンロードした脚本を元に、全米各地でリーディング上演やコンサートを行う。その収益金は日本劇作家協会を通して被災地の演劇活動に寄付される。それが、震災1年目の2012年3月11日に行われた“―震災 SHINSAI―Theaters For Japan ”の概要だ。ニューヨークのCooper Union大学内のGreat Hallで行われたリーディングイベントと翌日のJapan Societyで行われたトーク・セッション”SHINSAI:THE COVERSATION” に参加した。

1) 企画の発端
 山形出身でNY在住の俳優、ジェイムズ八重樫氏が、東日本大震災の報道に触れ、演劇人の立場で支援できることはないかと、この企画を立ち上げたことが発端。八重樫氏は「自分に出来ることは何か無いかと考えたとき、お前は何者なのかと考えた」と話しておられたが、それがこの、「アーティストがアーティストを支援する企画」となって立ち上がった。
ブロードウェイやオフ・ブロードウェイでも活躍する俳優である八重樫氏は、著名な劇作家の友人たちに、それぞれ短い作品を書いてもらってそれを朗読する企画を立ち上げ、The Public TheaterやLincoln Centerなどに場所の提供をお願いしたところ、ニューヨークの他の主要劇場にも声をかけられ、運営委員会が発足した。
 このイベントに、日本劇作家協会も賛同し、ゲスト、公募を含む、7名の日本の劇作家による8本の戯曲も参加することとなった。
当初、ニューヨークのみで想定していた企画はどんどん発展し、全米規模でプロから大学の演劇部なども参加する形式となった。
 

2)企画の目的
八重樫氏はこの企画の目的を下記のように語った。

1)全米の演劇人有志が一丸となって被災した日本の演劇人への思いを表すこと
2)アメリカにおいて東日本の復興への関心を復活させること
3)各地のイベントを通して、被災した演劇人のために支援金を募ること

これらの目的には、単に寄付を募るということのみではない、二つの国の相互理解への深い示唆がある。これはまさに、そういうイベントだった。

以下、ニューヨーク到着時から、このイベントに参加した様子を、時系列を追ってご報告致します。

3月10日(土)
到着予定時間より1時間早く飛行機がニューヨークに着き、そのままホテルへ。ホテルで国際交流基金の大平さんにお会いし、予定などを確認した後、Cooper Unionで行われているドレス・リハーサルに行く。そこでJapan Societyの山本さん、塩谷さんに合流。演出のBartlett Sher、劇作家のPhilip Kan Godandaはじめ、スタッフの皆さんをご紹介いただく。紹介されながらしみじみこのイベントの大きさに驚く。
演出のBartlet Sher氏は『南太平洋』でトニー賞を受賞されている演出家。音楽監督はStephen Sondheim氏の右腕として、ほとんどの作品の音楽監督をされているPaul Gemignani氏、照明はトニー賞受賞者のDonald Holder氏、音響は同じくトニー賞受賞者のScott Lehrer氏、舞台美術はSher氏直属の日本人舞台美術家の幹子Sマックアダムス氏がそれぞれ受け持って下さった。キャストも著名な俳優であるPatti LuPone氏をはじめ、ブロードウェイのベテランやニューヨークでも最高レベルのアジア系アメリカ人俳優たちが出演して下さっていると伺い、目を丸くした。
ひっくりかえそうになったのは、Stephen Sondheim氏とJohn Weidman氏がこのイベントのために、『太平洋序曲』の中から2曲を書き直して提供してくれたと聞いた時だ。John Kander氏らもミュージカル『THE SKIN OF OUR TEETH』の曲を提供してくれている。
この企画の特筆すべき点は、Cooper Unionnのようなニューヨークの中心で華やかなメンバーで行われるイベントがある一方で、各地のリージョナルシアターや大学など、全米で70を超す劇団・劇場がイベントに参加していることだ。またこれは後から知ったことだが、トルコ、イタリア、スカンジナビアなどでも上演されたとのこと。多くの劇場で、心ある各地の俳優達、学生達が、プロ、アマ問わず、同じ脚本、同じ曲で同じ日にイベントを行うということ。これがこのイベントに広がりをみせている。
実際に、NYのフォーダム大学で行われた9作品のリーディング公演を企画・プロデュースされたNYの非営利劇団Crossing Jamaica Avenue (CJA)の芸術監督で演出家の河原その子さんは、その公演を観て、「学生達のリーディングは素晴らしかった。満員の観客も、9作品、最初から最後まで、食い入るように観ており、自分も思わず涙ぐみそうになる場面もあった。若いアメリカ人演劇学生が、本当に情熱的で、真剣に向き合い、これら素晴らしい作品に出会えた事を心から感謝していた。演出的にも演技的にも、正直、学生達がここまでやるとは思わなかったほど、優れた成果を見せてくれた」と、その感動を率直に伝えてくれた。
キャリアのある演劇人による上演とアマチュアや大学生による上演、その両方があることで、イベント自体の裾野を広げると同時に、目的のひとつである、「アメリカにおいて東日本大震災の復興への関心を復活させること」への感心も促している。河原さんから、このイベントに参加するまで、学生の中には、「3.11」という日付にもピンと来ていない学生がいたといった話を伺い、その意義を改めて思う。
中心のイベントが行われたCooper UnionのGreat Hallは、昔、リンカーンが演説をしたこともあるという場所で、劇場というよりは、歴史を感じる美しく雰囲気のある「講堂」だった。そのため、古風な白い柱は建築としては美しいのだが、やはり観客席からはどうしても観えにくい席を作ってしまう。照明の灯体と狙いたい個所の間に柱があり、いわゆる照明家泣かせの講堂なのだ。しかし照明家はムービングなどの機材をかなり持ち込んでおり、美しい明かりを演出していた。音響も、スピーカー位置も調整も難しいだろう講堂にかなりの機材を持ち込んで工夫をしているようで、クリアーなPAと的確な効果音で作品を彩っていた。俳優もスタッフも全て無報酬だということを考えると、機材費などもどれほど自己負担しているのだろうと、同じ演劇人として分かるだけに感謝の気持ちも深くなる。
舞台は横長でオープンスペース。舞台高は比較的高く、バックはカーテン。このカーテンが照明でうまく染められ、作品の雰囲気をうまく醸し出していた。下手に全作品共通のト書きを読む俳優(ステージ・ディレクション)用の椅子があり、ほかの俳優たちは、下手後ろ側からセンターやや上手よりまで2列に並べられた椅子で待機する。雰囲気のあるホールにふさわしい椅子を探すのに苦労したと美術家の幹子・S・MacAdams氏が言っていただけに、舞台後方を占めている椅子のたたずまいは舞台に自然に溶け込んでいた。
マイクはセンター付近に6本。やや上手、センター、やや下手と3か所に2ずつあり、その前に台本を置ける譜面台を立てたシンプルな形。俳優たちは作品ごとに、あるいは登場の時に、マイクの前に立ちリーディングを行うという方式。
リハーサルはSher氏の的確な指示で丁寧に行われていく。終了は22時の閉館を超えて23時過ぎまで行われた。翌日のリハーサルは11時からだが、その翌日はサマータイムで、時間が1時間早まる。仕方のないこととはいえ、仕込みからゲネプロまでをハード・スケジュールでこなしているスタッフや俳優たちのことを考えると、真夜中から朝までの1時間がなくなり、彼らの睡眠時間が短くなるのかと思うと気の毒な気がしてならなかった。

3月11日(日)
午前中からリハーサルを進め、13時半過ぎに終了。作品数が多いため、15時と20時の2回に分けての上演だ。NYだけでも同じイベントが何カ所もで行われているということもあって客足が心配されたが、昼の部はおよそ500人、夜の部は700人以上の大入りで、非常に盛り上がった。夜の部には在ニューヨーク総領事ご夫妻も鑑賞された。
 プログラムは下記の通り。(別添有り)
Aプログラム 15:00~
1.『残された人』鴻上尚史 “THE REMAINING” 翻訳 Aya Ogawa
 2.”A FEW STOUT INDIVIDUALS” よりby John Guar
3.『さようならⅡ』(抜粋)平田オリザ “SAYONARAⅡ” 翻訳 Bryerly Long
3.”CHILD IS FATHER TO MAN” by Philip Kan Gotanda
4.『北西の風』篠原久美子 “WIND FROM NOTHWEST” 翻訳 James Yaegashi
5.”WHERE WERE WE? “ by Richard Greenberg
6.『一時帰宅』坂手洋二
”DROPPING BY THE HOUSE”  翻訳 Leon Ingulsrud
7.”THE LENGTH OF THIS PLAY HAS THE HALF LIFE OF URANIUM”
by Suzan-Lori Parks
8.TWO SONGS From “PACIFIC OVERTURES” adapted for SHINSAI
Music and Lyrics by Stephen Sondheim,Book by John Weidman

Bプログラム 20:00~
1.TWO SONGS From PACIFIC OVERTURES adapted for SHINSAI
Music and Lyrics by Stephen Sondheim,Book by John Weidman
2.『はっさく』(抜粋)石原燃 “HASSAKU” 翻訳 James Yaegashi
3.”THE ISABEL WHO DISAPPERED” by Naomi Iizuka
4.『ゾウガメのソニックライフ』(抜粋)岡田利規 
From “THE SONIC LIFE OF GIANT TORTOISES” 翻訳 Aya Ogawa
5.”UNDERWATER from CAROLINE,OR CHANGE”
by Tony Kushner and Jeanine Tesori
6.”A GUIDE TO JAPANESE ETIQUETTE” by Doug Wright
7.『ふるさとを捨てる』鈴江俊郎 “ABANDON HOME” 翻訳James Yaegashi
8.Children’s Monologue from “SEASCAPE” by Edward Albee
9.『血の問題』坂手洋二 “A PROBLEM OF BLOOD” 翻訳 Leon Ingulsrud
10. From “THE SKIN OF OUR TEETH”
Music by John Kander,Lyrics by Fred Edd,Book by Joseph Stein

出演俳優は下記の通り(出演順)
MICHI BARALL, THOM SESMA, JON NORMAN SCHNEIDER, JAMES YAEGASHI, JENNIFR IKEDA, JAY O.SANDERS, MARY BETH HURT, RICHRD THOMAS, JENNIFER LIM, PAOLO MONTALBAN, SAB SHIMONO, ANGELA LIN, JADE WU, LISA EMERY, CINDY CHEUNG, OLIVIA OGUMA, CINDY CHEUNG, PETER KIM RICHRD THOMAS, STACEY YEN, MARK MITCELL, PAUL PIZZUM, JOEL DE LA FUENTE, JOHNNY WU, ADRIA VITLAR, ANN HARADA, JEFFREY OMURA, HENRY STRAM, LI JUN LI, PAUL JUHN, PATTI LUPONE,
ピアノ…MARK MITCHEL,ANNBRITT DU CHATEAU
ドラム…PAUL PIZZUTI

それぞれの回の開演前に、リンカーンセンターシアターの劇場監督、Andre Bishop氏(午後の部)パブリックシアターの芸術監督、Oskar Eustis氏(夜の部)によるスピーチがあった。

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